江口弘美プロジェクト 植物
新宿ニコンサロン
福岡天神アートサロン
1982年
植物は長い進化過程で多くの種属に分化し、それぞれに特異的な形態をそなえている。この形態には生体としての秩序と機能美が見られる。私の写真はこのような植物の形態を率直に撮り、種属の特徴をできるだけ明瞭に描写することを基本にしている。しかしこの観点だけで撮りつづけると、生きている植物の存在を見失ってしまいそうな危険を感じる。一方、古くから「野にあるごとく」という言葉がある。このひと言は植物にかかわる私に大切な示唆を与えてくれるような気がしている。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
以下、個別テキスト引用元:日本経済新聞 1991年 土曜夕刊 連載 九州・緑の手帖
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- 植物名
- オオタニワタリ
- 掲載日
- 1991年6月1日
- 画像名
- 1_6_01_オオタニワタリ

比較的大型の常緑性シダ植物。樹の幹や枝に生えることが多く、日本では暖かい地方に自生する。写真は芽立ち(葉が生育する様子)を屋久島で撮ったものである。シダ植物の芽立ちは「種」によって特徴がある。このオオタニワタリは、若い葉が一枚一枚くるくると巻いている。それが解けながら若葉が広がってくる姿は強い生命力を実感させる。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- クスノキ
- 掲載日
- 1991年6月8日
- 画像名
- 1_13_02_クスノキ

神木として植えられているものも多く、また、この木に含まれている樟脳(しょうのう)は古くから利用されてきた。近年は街路樹としても植えられており、身近な常緑高木である。五月になると、光沢のある若葉が一斉に芽をふき生命の活力を見せる。写真は沸き上がるような新緑におおわれた大木の様子である=福岡県矢部。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- マムシグサ
- 掲載日
- 1991年6月15日
- 画像名
- 1_4_03_マムシグサ

サトイモ科。ほぼ日本全域の森林地帯に分布する。コンニャクの仲間で、ウラシマソウ、ムサシアブミ、オオマムシグサなどの近縁種がある。花がマムシのかま首のように見え、茎の模様がマムシのそれに似ていることから、あまり美しくない名前を付けられた。だが、林の下ばえの中からこの花がこちらを向いていると、つい声をかけたくなる=福岡県猪野。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- ウラジロ
- 掲載日
- 1991年7月6日
- 画像名
- 1_31_05_ウラジロ

正月の飾りに使われ、よく知られているシダ植物である。葉の裏面が白色であることからこの名がつけられている。一般にシダ類は湿った場所を好むが、ウラジロは比較的乾いた暖地によく繁る。この写真は、春から初夏にかけての葉の芽立ち、規則的に左右に大きく分かれて出る若葉には美しい生命感があふれている=福岡県猪野。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- ハマオモト
- 掲載日
- 1991年7月27日
- 画像名
- 1_28_06_ハマオモト

ヒガンバナ科で、ハマユウ(浜木綿)の名で知られている。夏に大きな茎が出て多数の白い花をつける。西南日本の砂地の海岸に分布するが、海岸環境の変化のせいか、近年自生するものがめっきり少なくなった。写真は、保護されてどうにか群生を保っているもので、撮影しながらこの花の芳香に酔った。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- ソテツ①
- 掲載日
- 1991年8月10日
- 画像名
- 1_11_07_ソテツ

中生代に大繁茂した植物の仲間で、日本では九州の暖地と沖縄に自生する常緑の低木である。雌雄異株(雄株と雌株が別)で、原始的な特徴をもつ植物である。シダ植物との近縁性も見られる。五月から六月にかけて、シダのような若葉がいっぱいに伸びる。写真はその若葉が放射状に出そろった状態である。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- ソテツ②
- 掲載日
- 1991年8月17日
- 画像名
- 1_15_08_ソテツ

六月の終わりごろから幹の頂きに長さ六十センチほどの雄花をつける。この花は独特なもので花弁もなく、花軸にへら状の雌しべがウロコ状に着生しその裏に花粉をつける。花粉が雌花の花粉室に入ると発芽して精子ができ受精する。この植物の精子が池野成一郎博士によって発見されたこと(1896年)は有名である。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- ソテツ③
- 掲載日
- 1991年8月24日
- 画像名
- 1_14_09_ソテツ

雌株のソテツは幹の頂上に、黄褐色の柔毛でおおわれた心皮で球花をつくる。これがソテツの雌花である。秋になるとこの球花の中の種子が色づいて赤い実となる。この実には毒が含まれているが、よく水洗いすると食糧にもなる。写真はこの球花で、すさまじい生殖機能をあらわにしているように見える。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- ネムノキ
- 掲載日
- 1991年8月31日
- 画像名
- 1_23_10_ネムノキ

マメ科の落葉高木である。夜になると葉を閉じることからこの名がつけられている。花は夏の夜に開く。この花にはピンク色の細長い雄しべが毛のように密生しており、不思議な美しさがある。英名はシルク・ツリーであり、この雄しべの集団が絹糸のように見えることからきた名であろう=背振山。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- リュウビンタイ
- 掲載日
- 1991年9月7日
- 画像名
- 1_5_11_リュウビンタイ

このシダ植物は石炭紀に繁茂した古生シダ類の特徴を残しており、日本では西南暖地から沖縄にかけて分布している。葉は二メートルにもなるものがあり、それが成熟するとともに表面のツヤが増す。写真は林の木もれ日に悠然と輝いている状態で、いかにもシダの王様のような風格を見せている=屋久島。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- フウラン
- 掲載日
- 1991年9月14日
- 画像名
- 1_1_12_フウラン

樹の幹に着生するラン科植物である。今は自生するものはほとんどなくなり、愛好家に育てられているものが多い。植物体は小型で、花も一、二センチと小さくて目立たないが、夏に咲く花はとてもかれんである。接写レンズを通して見ると、この小さな花も当然りっぱなランの形態を持っており、純白のバレリーナを思わせる。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)
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- 植物名
- ヤツデ
- 掲載日
- 1991年12月28日
- 画像名
- 1_20_18_ヤツデ

ウコギ科の常緑低木。魔よけの意味もあって、庭木としてもよく植えられている。晩秋には、大きな花序に五ミリほどの白い花が球状に集まって咲き、独特な風情がある。早春には実がたくさんできる。これを小鳥が運ぶのであろうか、思いがけない場所に幼植物が生えているのを見かける=福岡県猪野。
(引用元:『Nikon Salon vol.11』1982より)